ヤギの話・その6

2008年08月27日 23:30

1年生のピンキーが、
春野北小へ入学して2か月。

はじめての2年生との合同授業が行われた。

5名の2年生が、
裏山への自然観察の日。
担任の先生の提案で、
1年生のピンキーを連れて行くことになった。

代わる代わるに、ピンキーの紐をもって
歩く2年生。

嬉しさのあまり、
はしゃぎまわるピンキー。
好きな草を見つけると、
林道の右へ行ったり、左へ行ったり・・・。


幼い2年生が、
必死になって、踏ん張って
紐をひっぱり、1年生を連れていく。

「ピンキー!
2年生の言うことを聞きなさい!!」

女の子が
ピンキーに注意をするが、、
相変わらず
はしゃぎまわるピンキー。

「先生!
ピンキー、1年生なのに言うこときかない!」


先生はついに、笑いをこらえきれない・・・・

新しい1年生をむかえた
春野北小の1学期は、あっという間に終わった。

長い夏休みの間は
ピンキーは、我が家に帰省することになっていた。

先生たちの提案で
子ども達が通用口の前で
ピンキーの終業式を開いてくれた。

子ども達から、ピンキーへの言葉。

5年生の女の子は
「ピンキー、元気でいてください。
2学期になったら、どれだけ大きくなっているか楽しみです。
立派なヤギになってください。・・・・・・・
・・・2学期に会えるのを楽しみにしています。」


3年生の男の子は
「ピンキー、時々会いに行くから
元気でいてね。
食べすぎには注意してね・・・」


整列する子ども達の前に
めずらしくおとなしく立つピンキー。
飽きて動き出そうとすると、
先生が、タイミングよく好きな草をあげる。

再び、上級生の話を聞く1年生。

・・・・こんな終業式、いまどきあるのだろうか・・・
立ち会った僕は、なんとも言えないぬくもりを感じていた。


僕の軽トラの荷台に乗って
学校をあとにするピンキー。

子ども達は
「ピンキー バイバイ!」と言いながら、
いつまでも軽トラのあとを追いかけていた。

ヤギの話・その5

2008年08月24日 20:19

昼休み。
子ども達は、給食を食べ終わると
催促するように「めぇ〜めぇ〜」鳴いている
ピンキーの元へ、
一斉に駆けて行く。


ピョンピョン跳ねて、喜ぶピンキー。

小屋から外へ出すと、
広い校庭で、
ピンキーと子ども達の追いかけっこが始まる。

日増しに速くなっていくピンキーに
キャぁ、キャぁいって走り回る子ども達。
その歓声が、山々にこだましていく・・・・。

5年生の男の子が、こんな作文をかいていた。
『1年生のピンキーは、
どんどん走るのが速くなっています。
いまでは4年生ぐらいの速さです。
・・・・・・・・・
ピンキーのおかげで、
あまり外で遊ばなかった子も
昼休みはみんな、
校庭で遊ぶようになりました。
・・・・・・・・・・・』

昼休みが終わりになると
子ども達はまたピンキーを小屋の中へ。

校舎へ帰る子ども達の背中へ
「めぇ〜めぇ〜」と必死に鳴くピンキー。
授業が始まっても、
その声は教室内に響く。

「きっと、寂しいんだね。」
「ピンキー、一人っきりだものね」
と、窓を見る子ども達。


時々、
小屋の扉をしっかり閉めずに
ピンキーが飛び出すことがあった。
もちろんピンキーが目指すところは、
上級生たち。

一直線に通用口をめざし、
一階の2年生、3年生の教室へ。

突然廊下に「めぇ〜」が聞こえ、
ガリガリ戸をたたくピンキー。
開けてやると、
喜び勇んで、跳びこんで来る。


「ピンキー、ピンキー!!」と子ども達は大騒ぎ。
もうこうなりゃ、授業はそっちのけ。
それでも、そこは上級生。
女の子が、お姉さん顔で、

「ピンキー!ダメ。
ここは1年生の教室じゃないの。」

「そうだよ。ここは3年生の教室なの。」

「先生、ピンキー連れてってくるね。」


そして、放課後になると
また子ども達はピンキーのもとへ駆け寄り、
当番の上級生たちは、
先生たちに言われなくても
軍手と鎌を持って、
大きなリヤカーを引っ張っていく。

子ども達は
手がかかるが、
でも可愛くてしょうがない新1年生のために
はつらつと学校生活をおくっていた。



ヤギの話・その4

2008年08月21日 22:40

テレビのニュースや
新聞紙上で紹介された

春野北小の33名の児童たちと

新1年生のヤギのピンキー。

1年生がだれもいない ということで、
先生たちも、保護者も、
そして村人たちも
みんながガッカリしていたのが 一転

ふって沸いた明るい話題に
みんなが元気に、笑顔につつまれるようになった。


山あいの小さな、小さな小学校。
その後、6年間にわたって
テレビや新聞のカメラマンたちが訪れるようになった・・・。

新学期が始まった 春野北小。
新1年生のめんどうを、どうやっていくのか・・・

校長先生をはじめとした、先生たちは
温かい目で見守りながら、
児童たちの自主性を上手に導き出してくれた。

児童たちは、さっそく
生徒委員会をひらき、みんなで話し合って
6年生、5年生、4年生が
1週間づつ交代で
1年生のピンキーの世話をすることに決めた。


小屋の掃除と、エサの世話。

どちらも子どもにとっては、
なかなか大変な仕事で・・・・

子どもたちは、
手に、手に鎌を持って、
大きなリヤカーをひいて、坂道を下りていき、
みんなで刈った草を積んで、

こんどは、みんなでハァ、ハァいいながら
坂道を登ってくる。


「ホラ、ピンキー!食事の時間だぞ!!」

「メェ〜メェ〜」鳴きながら、待っていたピンキーは
ピョンピョン跳びはね、
喜び勇んで、草に飛びついていた。


「みんな頑張って、持ってきたんだぞ。
ピンキー、いっぱい食べろよ!!」


その光景を、先生たちは優しく見守っていた。









ヤギの話・その3

2008年08月19日 23:23

4月5日
春野町立北小学校の入学式が行われた。
会場は、山並みがきれいに映える、広々とした校庭。

在校生たちがつくる
花のアーチの列をくぐりぬけてくる
新入生は、
やっと乳離れが終わった
それはそれは可愛い、真っ白な子ヤギだった。


名前は、ピンキー。

保護者たちや、村の人たち、そして先生たちが
山にこだまするような拍手で迎え、

新聞社、テレビ局のカメラマンたちが
一斉にシャッターを押す。

当のピンキーは、
何事が起きたのか、わけもわからず
ピンキーの真っ赤な首輪に付けた紐を持つ
僕の足元に隠れたり、

ビックリしたように、
ピョンピョン跳びはねている。
それが、おどけた仕草にうつり、
みんなの笑いをさそう。


校庭じゅうが、
なんとも言えない温かい空気につつまれる。


校長先生の挨拶がはじまった。

「・・・・こんな、すばらしい入学式ができるのは
北小のみなさん達だけです。
・・・・一年生の子ヤギを迎えることで、優しい心を
育んでください。・・・」


一年生を迎える言葉は、6年生の男の子。

「・・・ボクたちと、楽しく遊びましょう。
そして、山登りマラソンも
運動会も一緒にやりましょう・・・。」


すると、偶然にも
一年生の子ヤギが空に向かって

「メェ〜 メェ〜」

会場が、大爆笑につつまれる。

たまたま、その年PTA会長で
ピンキーの親代わりとなった僕が、

「今日から、世話をするのはみなさんです。
ヤギの好きな草は何なのか、
嫌いな草は何なのか、
ヤギの喜ぶことは何なのか・・・
みんなで勉強して、
全員が、ヤギ博士になってください。」


式が終わると、
2年生から6年生まで44名の児童たちが
ワーッと、ピンキーのまわりに集まった。

ますますおどけた仕草をするピンキー。

目を輝かせて見守る児童たち。

その日の夕方、
TVのニュースで大々的に
田舎が創りだした
楽しい、楽しい入学式の模様が映し出されていた。

こうして、前代未聞のヤギの小学校生活がはじまった。
卒業式をむかえるまでの6年間。
子ども達とピンキーとの
愉快な物語
を、次回からご紹介します。

ヤギの話・その2

2008年08月16日 12:21

残念なことに、その年、新入生がいなかった
春野町立北小学校。

「よし!それなら
可愛い子ヤギを入学させよう!!」


先生たちも、PTAの保護者たちも
(山の子の誇りを持った、北小っ子)
をスローガンにする
北小の児童たちのために
可愛い新入生を迎えることに決定した。

新年度まであとわずか。

「さぁ〜みんなで準備にかかろう!!」
総勢20数名のPTA会員と
先生たちが
いままでに見たこともない入学式にむけて
心を1つにして、
晴れやかな顔でとりかかった。

「自分らもヤギの乳で大きくなったんだ」という
校長先生や教頭先生は
さっそく、(ヤギの飼育)の本を購入。


お父さんたちは、
校庭内のどこにヤギの小屋をつくり、
どういう柵を張り巡らせたらいいのか・・・
を検討。


先生たちは、児童たちに
ヤギの話をし、
「みんなで新入生の名前を決めよう!!」


この頃になると、
村の人たちの間でも

「おい!聞いたか?
学校に子ヤギが入学するらしいぞ。」

「なに?子ヤギ・・・・?」

「面白いことするなぁ・・・」
と、話題でもちきり。


僕は、他のPTA役員と一緒に
懇意にしているヤギ屋さんに出向いた。

ちょうど生後2,3週間の
まるで縫いぐるみのような
小さな、小さな子ヤギ
が3頭
母親のおっぱいを吸っていた。

「この子らなら、
ちょうど乳離れもして、4月には
可愛いさかりになってますよ。」とヤギ屋さん。

早く子ども達に見せてあげたいなぁ
の思いで、僕たちは山里へもどった。

子ヤギの遊び場と小屋は
校庭をはさんで、校舎と向かい合う
プール横の斜面に決定。

自分たちで材料を持ち寄り、お父さんたちの
にわか土方仕事、にわか大工仕事
が始まった。

新入生の名前は、
児童たちのアンケートにより、

ピンキーに決定。

再びヤギ屋さんに出向いて
3頭の中から
いちばん気性がやさしそうで、
いちばん可愛い
メスの子ヤギを指名。

これで、準備は万端。
待ちに待ったピンキーの入学式まで
あと2日となった。

「新聞社も、テレビ局も来てくれるそうです。」と教頭先生。
「なにか、えらい事になったな〜(笑)」とPTA.

ついに、いままで見たこともない
子ヤギの入学式 当日となった。、

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